はじめに:Amazon FBA手数料の基礎知識
Amazon FBAはたくさんのセラーが使っているサービスですが、配送代行手数料(送料)と在庫保管手数料以外にも、実はいろんな手数料があります。
これらの手数料がいつ、どうやってかかってくるのか、きちんと理解しているセラーって意外と少ないんじゃないかと思うんですよね。
FBA手数料は大きく3つに分かれています:
主要手数料
- 配送代行手数料
- 在庫保管手数料
ペナルティ系手数料と呼んでいるもので
- 在庫保管追加手数料
- 長期在庫追加手数料
- 低在庫レベル手数料
- 納品不備受領作業手数料
その他手数料として
- 返送/所有権の放棄手数料
これらがFBA関連の手数料のほぼ全てになります。
もし他にあったとしても、それはかなりマイナーなものだと考えていいでしょう。
今回は、これらの手数料について詳しく見ていきたいと思います。
手数料の中身だけじゃなくて、実際にどうやって確認するのか、どうやったら減らせるのか、実践的な情報もお伝えしていきますね。
配送代行手数料
概要
配送代行手数料は、商品を配送する際に1点ごとにかかる手数料です。
一般的な倉庫会社では入出庫やピッキング作業に費用がかかりますが、FBAではこれらの費用は実質的にかかりません。
つまり、この手数料は実質的に購入者向けの送料と考えて良いでしょう。
FBA配送代行手数料の特徴として、以下の3つが挙げられます:
- 全国一律料金制
ヤマトや日本郵便のような通常の配送サービスでは送り先によって料金が変動しますが、FBAでは東京も沖縄の離島も同じ料金で配送できます。 - サイズと重量による料金設定
商品の大きさと重さによって手数料額が決まります。
小さく軽い商品は手数料が安く、大きく重い商品は高くなります。 - Amazonによる計測
サイズと重量はAmazonが計測を行います。
自分が工場に確認済みの商品サイズと、Amazonが計測した結果が異なることもありますが、その場合は再計測を依頼することが可能です。
マルチチャネル
配送代行手数料には、通常の配送以外にマルチチャネルフルフィルメント(MCF)というものがあります。
MCFはAmazon以外のチャネル(自社サイトや他のECモール)で受けた注文をAmazonの倉庫から発送できるサービスです。
便利な反面、通常のFBA配送より割高になる点に注意が必要です。
特に小型や高さ3.3cm以下の商品であれば、マルチチャネルではなく、他の手段でクリックポストやネコポスを選んだ方が良いでしょう。
手数料レート
通常配送
MCF
手数料額の確認方法
セラーセントラルの3本線メニューから、在庫 > 全在庫の管理を選びます。
右端の「FBA手数料」が配送代行手数料になります。
在庫保管手数料
通常の在庫保管手数料
在庫保管手数料は、FBA倉庫に保管している商品に対してかかる手数料です。
この手数料は、各商品の1日の平均在庫容量(立方メートル単位)に基づいて計算され、暦月単位で請求されます。
サイズの測定については配送代行手数料と同様、Amazonが計測を行います。
在庫の入庫時にAmazonが測定し、もし異議がある場合は再計測を依頼することができます。
在庫保管手数料の大きな特徴は、年間を通じて料金が変動することです。
具体的には:
- 通常期(1月~9月)
- 繁忙期(10月~12月)
と分かれており、繁忙期は通常期と比べて約8割増しの料金となります。
これは、プライム感謝祭やブラックフライデー、クリスマス商戦で倉庫が混み合い、臨時スタッフの雇用なども必要になるためです。
繁忙期の在庫管理は特に慎重に行う必要があり、入れすぎず、かといって少なすぎない適切な在庫量の維持が重要です。
FBA料金シミュレーター
なお在庫保管手数料は「FBA料金シミュレーター」で確認することができます。
ここでは詳しくは解説しませんが、セラーセントラルから直接アクセスするか、Googleで検索することで見つけることができます。
シミュレーターでは、対象のASINを入力することで、月額在庫保管手数料を含む、様々な手数料を確認することができます。
ここで重要な点は、Amazonは在庫保管料で利益を出そうとは考えていないということです。
むしろ、倉庫の効率的な運用を重視しており、そのために様々な規則や罰金制度を設けています。
セラーにとっては面倒に感じる規則も多いかもしれませんが、これはAmazonの事業モデルを考えれば必然的なものと言えます。
実際の在庫保管手数料の確認は、セラーセントラルのレポート>フルフィルメントから、在庫保管手数料レポート(月次)で確認することができます。通常、前月分のレポートは毎月7日頃に作成可能になります。
在庫保管追加手数料
在庫保管追加手数料は、売れ行きに比べて在庫が多すぎる商品に課される罰金です。
もちろんAmazonが公式に罰金と名付けているはずはなく私が言うてるだけです(笑)
この手数料の目的は、在庫を効率的に回転させることにあります。
適用条件は以下の通りです:
「過去13週間における1日の平均在庫容量を1日の平均出荷容量で割った比率が26週を超える商品」
26週というと、1年が52週なので半年となります。
つまりAmazonは、預かった商品を半年以内に売りさばいて欲しいと考えているわけですね。
ただし、全てのセラーにこの手数料が適用されるわけではありません。
以下の条件に当てはまる場合は除外されます:
- 大口出品者で、在庫保管スペースの使用比率が26週以下の出品者
- 新規出品者(過去52週未満の間に初めて在庫をAmazonに納品した出品者)
- 小口出品者
- 1日の平均在庫容積が0.71立方m未満の出品者
- 在庫保管日数が0から30日の在庫
つまり、この手数料は新規出品者や小規模セラーではなく、ある程度の規模で活動しているものの、在庫回転が遅いセラーを対象としていると思われます。
実際の手数料レートは、商品カテゴリーによって異なります。
服&ファッション小物、シューズ&バッグは全サイズが対象となりますが、それ以外のカテゴリーは小型・標準サイズのみが対象で、大型と特大型には適用されません。
この手数料の確認方法は、セラーセントラルのレポート>フルフィルメントから、在庫保管手数料レポート(月次)で確認することができます。毎月7日頃に前月分のレポートが作成可能になり、在庫保管手数料と追加手数料の両方を確認することができます。
手数料レート(追加手数料含む)
このレートは立方デシm(10cm×10cm×10cm)単位であり、在庫保管手数料で使用される立方m単位とは異なる点に注意が必要です。
手数料額の確認方法
セラーセントラルの3本線メニューから、レポート > フルフィルメントを選びます。
Amazonフルフィルメントレポートの画面になるので、左のメニューから「在庫保管手数料レポート(月額)をクリックします。
在庫保管手数料レポート(月次)の画面になったら、期間を設定して、緑のボタンを押します。
すると、画面下にレポートが作成されます。この作成されたファイルを開いて、在庫保管手数料と在庫保管追加手数料を確認できます。
なお毎月7日ごろ以降に、前月のデータが反映します。
長期在庫追加手数料
概要
長期在庫追加手数料は、保管期間が270日(約9ヶ月)を超える商品に対して課される手数料です。
この手数料も立方デシm(10cm×10cm×10cm)単位で月額計算されますが、その金額は通常の繁忙期と比べても非常に高額になります。
具体的な料金を見てみると、商品カテゴリーや時期によって16円から27円という範囲で設定されています。
これは通常の在庫保管手数料(通常期で5円程度、繁忙期で10円程度)と比較すると、いかに高額であるかがわかります。
このような高額な手数料が設定されている理由は明確です。
Amazonは各セラーに在庫を効率的に回転させてほしいと考えており、売れないまま長期間置かれている商品は望ましくないと判断しているのです。
ですから、どんなに長くても9ヶ月以内に売り切ってほしいというAmazonの意図が、この手数料設定に表れています。
このような高額な手数料が発生する場合、そのまま在庫を保管し続けるよりも、一旦FBA倉庫から商品を引き上げることを検討した方が良いでしょう。
手数料レート
手数料額の確認方法
長期在庫追加手数料の確認は、セラーセントラルのフルフィルメントレポートから行うことができます。
フルフィルメントレポートメニューの「在庫保管手数料レポート(月次)」の下にある「長期在庫保管の追加手数料レポート」を選択します。
確認したい期間を設定して緑のボタンを押すことで、該当する商品の情報を確認することができます。
ただし、長期在庫に該当する商品がない場合は、レポートは作成されません。
低在庫レベル手数料
概要
低在庫レベル手数料は、在庫が常にギリギリの状態で運営している商品(親ASIN)に対して課される手数料です。
「なんでこんな手数料があるのかな?」と思ってましたが、FBAに必要最小限の在庫しか入れないセラーが一定数存在するようですね。
Amazonとしては、ある程度の在庫がFBAのオペレーション効率が落ちてしまうので、それを防ぐために設けられた手数料です。
適用条件: 過去在庫日数が14日未満である場合で、具体的には長期(直近90日間)と短期(直近30日間)の過去在庫日数の両方が14日未満の場合に適用されます。
ここでいう過去在庫日数とは、1日の平均在庫数を1日の平均出荷数で割った数値です。
つまり、このままのペースでいくと14日以内に在庫が切れてしまう状態を指します。
ただし、以下の場合は手数料が除外されます:
- 大型・特大サイズの商品
- 新規大型出品者(最初の在庫受領日から365日間)
- FBAを新規に利用する親ASIN(最初の在庫受領日から180日間、FBA新商品特典プログラムに登録要)
- 過去7日間の販売点数が20点未満の商品
手数料のレートは、商品のサイズ区分に加えて、過去在庫日数によって2段階に分かれています。
注目すべき点として、この手数料は在庫保管手数料ではなく、該当商品のFBA代行手数料(送料)に上乗せされる形で請求されます。
また、在庫切れの状態で販売するつもりがない場合は請求されません。
手数料レート
確認方法
対象商品
低在庫レベル手数料の対象商品を確認するには、セラーセントラルの「3本線メニュー」から在庫>FBA在庫を選択します。
「FBA在庫管理」画面で低在庫レベル手数料のタブをクリックします。
「手数料が適用されます」にチェックを入れると、該当する商品を確認できます。
過去の在庫日数の確認
また、各商品の過去の在庫日数を確認したい場合は、上記の「低在庫レベル手数料」のフィルターをかけない状態で「過去の在庫日数」という項目を確認します。
その「詳細」にマウスを合わせると、短期と長期それぞれの過去在庫日数を確認することができます。
手数料額の確認方法
実際にかかった手数料の金額は「SKUの諸費用レポート」でのみ確認可能です。
このレポートは、セラーセントラルのヘルプページにある「便利な手数料ツールの一覧」から見つけることができます。
3本線メニューの中にはないので、ヘルプで「便利な手数料ツールの一覧」と検索してみてください。
SKU諸費用レポートをクリックします。
ステップ1と2で必要な項目を選択すれば完了です。
返送/所有権の放棄に関する手数料
返送/所有権の放棄に関する手数料は、Amazonに返送や廃棄を依頼する際に、商品1点ごとにかかる手数料です。
返送の場合はこの手数料が実質的に送料となります。
手数料の金額を見ると、商品1件あたり最も安い場合で30円、最も高い場合でも350円プラス5000gを超えた分の1000gにつき40円という設定になっており、一般的な配送料と比較すると、かなり安価な料金設定ですね。
ただし、この安価な料金設定には注意点があります。
まず、配送にかかる日数が非常に長くなります。
通常期で10~14営業日、繁忙期ではさらに長くなるとされており、経験上、1週間で届くこともあれば、1ヶ月ほどかかることもあります。
これは時期によって大きく変動します。
また、FBA倉庫に納品した商品は、最初の納品後、全国の倉庫にバラバラに保管されることになります。
そのため、返送を依頼すると、各倉庫から別々に商品が返送されてくることになります。
返送の受け取り先が確保できている場合は、この安価な返送サービスを積極的に活用するのも一つの選択肢と言えるでしょう。
手数料レート
納品不備受領作業手数料
概要
納品不備受領作業手数料は、FBAへの納品に不備があった場合に課される手数料です。
これは各FBA倉庫によって対応が異なり、必ずしも全ての不備に対して対応してくれるとは限りません。
不備の内容によっては、着払いで強制的に返送されることもあります。
僕自身、商品ラベルの問題で着払いでの返送を経験したことがあります。
これは完全に自分のミスなので仕方ないですが。。。
この手数料は商品1個ごとに計算されるため、大量の商品に不備があった場合は大きな負担となる可能性があります。
そのため、ラベルの貼り漏れや印字のかすれ、不十分な梱包、誤入力など、基本的なミスには特に注意しましょう。
手数料レート
FBA手数料を抑えるために
FBA手数料を効果的に抑えるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
ここでは具体的な対策方法を紹介します。
配送代行手数料(送料)の削減
パッケージを極力小さくすることが最も効果的な対策です。
特に袋タイプの商品の場合は注意しましょう。これは配送代行手数料と在庫保管手数料の両方に影響する重要な要素です。
工場が用意するパッケージは、必ずしもFBAのサイズ区分に最適化されているわけではありません。
そのため、FBAのサイズ区分に合わせて可能な限り小さくすることをお勧めします。
ただし、商品が問題なく入ることが大前提です。
在庫保管関連手数料の削減
FBA新商品特典プログラムに登録
在庫保管手数料(追加手数料、低レベル手数料、長期保管手数料を含む)を抑えるためには、「多すぎず少なすぎず」の適切な数量を納品することが重要です。
これは実際にやってみないと最適な数量が分かりづらい面がありますが、FBA新商品特典プログラムに登録しておくと、親ASINごとに最初の納品から120日間は在庫保管料がかかりません。
これを活用することで、2回目以降の納品数量の最適化に向けたデータを収集できます。
外注倉庫との契約
また、必要に応じて外注倉庫の契約を検討することをお勧めします。
私も以前から外注倉庫を活用していますが、在庫保管追加手数料や長期在庫追加手数料、低在庫レベル手数料の対策として、また最近変更されたFBA在庫の保管制限への対応としても、外注倉庫の活用は検討する価値があります。
安売りやタイムセールの活用
思うように売れない場合の対策としては、安売りやタイムセール、クーポンの活用、返送などの方法で在庫を減らすことが有効です。
Amazonは回転の悪い在庫は置いておいて欲しくないと考えており、そのための手数料や罰則を設けています。状況に応じてこれらの対策を実施することが重要です。
納品不備手数料の防止
納品不備手数料を防ぐためには、ラベルの貼り漏れや印字のかすれ、不十分な梱包、誤入力など、ありがちなミスに注意を払う必要があります。これらは当たり前のことですが、業務に慣れてくると時々発生してしまいがちなので、常に注意を怠らないようにしましょう。
まとめ
今回は、Amazon FBAの手数料体系について、主要な手数料からペナルティ系の手数料まで、詳しく解説してきました。
配送代行手数料と在庫保管手数料という基本的な手数料に加えて、在庫の効率的な運用を促すためのさまざまな追加手数料があることがお分かりいただけたと思います。
これらの手数料は、セラーの在庫管理を最適化し、FBA倉庫の効率的な運営を実現するための重要な仕組みとなっています。
特に重要なのは、これらの手数料を「コスト」として捉えるだけでなく、効率的な在庫運営のための指標として活用することです。
商品のサイズ最適化、適切な在庫量の維持、外注倉庫の活用など、状況に応じた対策を講じることで、手数料を適切にコントロールすることが可能です。
定期的に各種レポートをチェックし、必要に応じて在庫戦略を見直すことで、より効率的なビジネス運営が可能になるでしょう。